満月~full moon~
「殺したのは、遺書通りあの5人に間違いはない。
だけど、理由を作ったのは私なんだ」
「理由……?」
私は、首を傾げる。
「私が今主任をやっているけど、以前は美佳がやっていた。
今生きていたら、課長クラスになっていたと思う。年下のくせにっ……」
そう言ったお姉ちゃんの顔は、睨みをきかせている。
今でも、美佳さんが憎いらしい。
「美佳が嫌いだった。
あとから入ってきたくせに、年下のくせに、私より上に行く。そして、上司も美佳を頼る。
美佳より年上の私は、いつも比べられていた。それが、苦痛だった。
美佳なんて、いなくなればいいと思った」
天井を仰いだお姉ちゃんの目には、涙が浮かんでいた。