満月~full moon~
「俺は、福原陸です。
犯人である子の……昔の知り合いです」
複雑な表情で言う彼を見たら、それだけではないような気がした。
だけど、それ以上は聴けなかった。
最初、早歩きをしていたはずなのに、いつの間にか走っていた。
そのため、ビルの屋上に着いた時には、息切れしていた。
息を整えながら、少し開いているドアの隙間から覗く。
屋上に誰かが立っているのが見えた。
陸さんの言う通り、あの人が犯人なのだろうか。
後ろ姿しか見えないけど、女性だったことに驚いた。
本当に、私が知っている人なのだろうか。
でも、どことなく見たことがあるような。
それも、毎日見ている気がする。