満月~full moon~



キィーッ



物音を立てないように見ていたのに、いつの間にかドアを押していて音を出してしまった。

その音で、彼女が振り返る。



「誰っ!?」



振り返ると同時に、彼女は大きな声を出す。

その顔を見て、私は驚いた。

そして、その場から動けなくなった。


この状況が把握出来ない。

なぜ、彼女がここにいるのだろう。

何かの間違いだよね。


そんなことを思っている私よりも先に、陸さんが動いた。



「俺だよ、由佳」



隣で陸さんが呼んだ名前は、私が思っていた名前ではなかった。

別人なのだろうか。


イヤ、そんなはずはない。

目の前にいるのは、確実に私が知っている人だ。




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