満月~full moon~
暗い夜道、車も通らなく、自分以外に歩行者もいない。
なのに、突然足音が聴こえた。
私みたいな家へ帰る人かと思ったけど、なんだか様子がおかしい。
振り返っても、人は見当たらない。
前を向き歩き出すと、また足音が聴こえる。
それも、私が止まれば相手も止まる。
もう1度振り返るけど、誰もいない。
つけられているようで、気持ち悪かった。
亜弥が亡くなったばかりだから、余計に嫌だった。
だから、足早に家へ向かった。
後ろの足音を振り切るように。
だけど、こういう時はとことん運が悪い。
もう家が目の前にあるのに、信号が赤だった。
「もー、早くしてよっ」
そう呟く声は、大きく聴こえる。
それだけ周りの音はしない。