満月~full moon~
とにかく無我夢中で、首に巻き付いているものを取ろうとした。
だけど、緩むどころかどんどん締まっていく。
誰かが、それをずっと引っ張っているみたいに。
だから、首との間に指が全く入らない。
叫ぶにも、叫べない。
本当に、ヤバイと思った。
でも、もう遅い。
声も出ないし、首のも取れない。
次第に、意識も遠退いていった。
次の日、ある会社のオフィスでは、朝から騒がしかった。
「ねぇ、浅見さん来てないの?」
主任の広瀬智子がじろりと睨みながら、大声で事務の子に聴いていた。
そうとう、機嫌が悪いようだ。
「あ、はい……。
お電話も繋がらなくて……」