満月~full moon~
男が女に詰め寄っても、女は表情を一切変えずに淡々と言う。
目も合わせようとはしない。
「俺は、嫌だから。受け入れない」
本当は、何を言っても無駄だっていうことに気付いていた。
だけど、男にとってすんなり受け入れられるものではなかった。
「……そう」
女は小さく呟いて、立ち上がった。
「あなたが何を言おうと、別れます。
さよなら」
そう言って、男に背を向けて歩き出す。
「待てよっ」
男は、女の背中に向かって叫ぶ。
だけど、女は1度も振り向こうとはしなかった。
「何でだよっ。由佳っ!」
それでも、叫び続ける。