満月~full moon~
陽子は正直に話してくれたのに、オレらは何一つ真剣に聴いていなかった。
しかも、亡くなったのは、オレらと別れたすぐあとだった。
亜弥のこともあったし、陽子が聴いた声のこともあって不安だったはずなのに。
せめて家まで送っていれば、死ぬことなんてなかったのかもしれない。
だけど、今更後悔したって遅いんだ。
どうやっても、元には戻らない。
「もう泣くなって。
泣いたって、亜弥も陽子も生き返らねぇから」
『うん、分かっているよ……』
鼻をすすりながら、涙を止めようとしているみたいだった。
それでも、たまに嗚咽が聴こえる。
仕方がない。
なかなか気持ちは切り替えられるものではないから。