満月~full moon~
「荷物はこちらになります。
サインをお願いします」
「あ、はい」
伝票にサインをして、宅急便のお兄さんに渡した。
イヤ、お姉さんにも見える気がする。
髪が短くて、声が低いから、たぶん男の人だろうけど、中性的に見えた。
「はい、ありがとうございました」
そう言って去って行く宅急便の人の口元が緩んでいたのを、オレは全然気づかなかった。
それよりも、荷物が気になっていたから。
その荷物の差出人は、志保になっていた。
「何だぁ?わざわざ送ってきて」
不思議に思いながらも、荷物を開けた。
その中には、オレが大好きな赤ワインが入っていた。