満月~full moon~
だけど、差出人が志保で、誕生日のサプライズ。
人の誕生日なんて、仲良くないと分からないことだ。
だから、全然注意もしなかった。
不思議に思ったものの、ためらわずグラスに口をつけ飲んだ。
「ん?なんか変な……ごふっ」
飲み込んだとたん、変な味がして吐き出した。
上手く息が出来ず、飲み込んだものが次々と戻ってくる。
「かはっ……」
吐き出したものは、赤ワインだと思う。
なのに、口の中では血の味もしている。
とにかく水が欲しくて、テーブルに掴まりながらキッチンへ行こうとした。
でも、遠い。
近くにあるはずなのに、遠く感じる。
テーブルで支えている手は震え、足は重たく動かない。