満月~full moon~
追いかけることは出来なかった。
全てが呆気なさすぎて、戸惑っていた。
だけど、何度呼んでも女は振り返ることはなかった。
「ごめん、ごめんね。
こうするしかなかったの……」
公園を出たところで、女はそう呟いた。
その目には、涙が溜まっている。
それから、ゆっくりと目を閉じ、一筋の涙を流した。
「これでいい。
これで、彼には迷惑をかけない」
そして、目を見開く。
そこには、さっきまでとは違う表情をした女がいた。
無表情ではなく、睨みつけるような鋭い眼差しだ。
それから女は、空を見上げた。
綺麗な満月が光っている。
「スタート」
それを見つめ、呟いた口元は、微かに笑っていた。
綺麗な満月の元、誰にも知られず復讐という名の幕が上がる。