満月~full moon~
焦る気持ちを抑えつつ、達成の家に着き、インターホンを鳴らす。
でも、やっぱり応答がない。
恭介がドアノブに手をやり回したとたん、アタシを見た。
どうやら鍵が開いていたらしく、ドアが開いたのだ。
ゆっくりドアを開け、中の様子をうかがう。
玄関には達成の靴しかなく、中は静かだった。
だけど、凄い臭いがする。
異常なほどにする臭い。
それは、血の臭いではない。
日常の中でアタシはよく嗅ぐ臭いだ。
「ねぇ……凄いワインの臭いしない?」
「異常なほどにするな。酔いそうなほどに」
やっぱり、おかしい。
ワインがこぼれているみたいなのに、放置してあるなんて。