満月~full moon~
もう1度、恭介が携帯を鳴らす。
そのとたん、家の中から音楽が聴こえた。
それで確信した。
やっぱり、達成は家にいるんだ。
そう思ったから、勝手に上がらせてもらった。
これで、何もなく寝ているのならいい。
それなら、安心するのだけど。
「達成?いるのー?」
辺りを見渡しながら、名前を呼ぶ。
それでも、どこからも返事はない。
進んでいくにつれて、ワインの臭いは強くなっていく。
それは、リビングへ入ったとたん、強烈になった。
その時、何かを蹴った。
足下を見ると、それは割れたガラスコップだった。
なぜ落ちているのか不思議に思いながらも、周りを見ると、物が散乱している。