満月~full moon~



「あ、そっか。
陽子の高校からの仲間、高木志保です。よろしく」



沈んだこの空気を払拭するかのように、明るく言った。



「あ、じゃあ、池内亜弥さんとも?」


「え?亜弥を知っているの?」



思いがけない名前が出てきて、驚いて聴いた。

すると彼女は、首を振って否定した。



「知り合いではないです。
ただ、浅見さんが落ち込んでいた理由を知っていたので」


「え、やっぱり落ち込んでいたの?」


「はい、友達を亡くしたので。
ただ、何かに怯えている感じもありましたが」



彼女のその言葉に、アタシが落ち込んでしまう。

明るく振る舞ってはいたけど、実際は不安で仕方なかったんだ。




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