満月~full moon~
そのうち、ようやく警察が来て規制された。
ある程度、人は追いやられたけど、大半がその場で立ち止まったままだった。
痛々しい状況で見ていられないはずなのに、私の目は女性を捕らえたまま離さない。
女性の目は、ゆらゆら揺れていて焦点が合っていない。
それなのに、ふと女性と目が合った気がした。
そして、微かに唇が動いている。
「逃げ……て……」
そう言っている気がした。
よく意味が分からず、じっと女性を見つめた。
その時になって、初めて彼女の顔を見た。
そして、ようやく気付いたんだ。
「亜弥っ!」
思わず、その場で叫んだ。
そして、人混みをかき分けて、規制されている中へ入ろうとした。