満月~full moon~
携帯を見ると、電話らしく、相手は恭介だった。
長い間鳴る携帯を、彼女はただ見つめたまま、ほっといた。
そして、電話が切れたのを確認すると、メール作成画面を出した。
《ごめん、今日は疲れているからもう寝るね。
おやすみ》
そう作成して送信した。
もちろん、送信相手は恭介だけど、送り主は志保ではない。
《分かった。おやすみ》
恭介から返事が来たのを確認してから、携帯の指紋も拭き取り、わざと寝室のベッドの上に置いた。
志保が出かけた時に持っていたであろうバッグと共に。
それから、コップを一つ棚にしまった。
そして、わざとドアのとこに少量の血痕をつけて、彼女は志保の家をあとにした。