満月~full moon~
でも、本当はもう1人いるんだ。
俺しか知らなかったけど、これ以上黙っている必要はないだろう。
仲間がいなくなった以上、脅されてまで守る秘密でもなくなった。
そう思った俺は、携帯を手にして電話をかけた。
美佳の事件以来、連絡も取らなかった相手に。
『はい』
何回か鳴らしたあとに、相手は出た。
意外だった。
10年も経っているのに、番号が変わっていなかったことが。
「あの、俺ですけど」
それだけ言うと、一瞬相手の息が止まった気がした。
どうやら、驚いているらしい。
『……本当に、恭介?』