満月~full moon~



でも、本当はもう1人いるんだ。


俺しか知らなかったけど、これ以上黙っている必要はないだろう。

仲間がいなくなった以上、脅されてまで守る秘密でもなくなった。


そう思った俺は、携帯を手にして電話をかけた。

美佳の事件以来、連絡も取らなかった相手に。



『はい』



何回か鳴らしたあとに、相手は出た。


意外だった。

10年も経っているのに、番号が変わっていなかったことが。



「あの、俺ですけど」



それだけ言うと、一瞬相手の息が止まった気がした。

どうやら、驚いているらしい。



『……本当に、恭介?』




< 80 / 137 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop