満月~full moon~



「みんなが殺された以上、あなたのことを黙っている必要はありません。
この事件の発端である、あなたが殺されるべきだから」



俺は、きっぱり言って電話を切った。

切る時に、“待って”と聴こえたけど、無視した。

彼女も苦しめばいいんだ。

俺たちが苦しんだ10年を思い知ればいい。


俺はこの時、もう犯人を捕まえる気はなくなっていた。

ただ、俺ら以上に彼女が罰を受ければいい。

そう思っていたんだ……。






「……主任?広瀬主任?」


「えっ?あ、どうしたの?」


「どうしたの、はこっちの台詞です!
最近、ボーッとしすぎですよ」



陽子が働いていた会社で、朝から大きな声が飛んでいた。




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