満月~full moon~
「智子は、いつも美佳と比べられていた。
会社の上司ですら、美佳を頼っていた。
それが、許せなかったらしい」
「たかが、それだけのことでお姉ちゃんは殺されたと……?」
その声は怒りでなのか、震えていた。
だけど、声とは裏腹に、表情は笑っていた。
この表情で決まった。
智子もすぐにターゲットになったということが。
俺にここを使ってしまったあと、どうするのだろうか。
智子は、俺が死んだあとはどう過ごすのだろうか。
俺が気にしたところで、どうにもならないことだけど。
「真実を教えてくれたあなたは、生かしといてあげようか?」
少しの笑みと共に、そんなことを言った。