満月~full moon~
情けなのだろうか。
そんなこと言って、最後の最後に殺すのだろうか。
イヤ、智子が黒幕とはいえ、彼女が志保たちを殺すことになったのは俺のせい。
それなのに、俺1人が助かる訳にはいかない。
「イヤ、君が本当に生かしてくれるんだとしても俺は、自ら幕を下ろす」
「自ら……?」
きっぱり言った言葉に、彼女の眉がピクリと動く。
そして、不審そうな顔をして俺を見た。
「予定では、俺が最後だった。
だから、この場所を選んだんだろう?美佳と同じように、飛び降りに見せるために」
彼女は目を閉じ、一つ息を吐いて目を開けた。
それから、俺をじっと見た。
「何で……そこまで分かるもの?
なぜ今、自ら幕を下ろそうとする?」