満月~full moon~
それは、自己満足でしかない。
おそらくまた、彼女は怒るだろう。
それでも、彼女には言いたかった。
10年以上、ずっと俺の中で秘めていた想いを。
「俺、志保が好きだったんだ」
一生言うことはないと思っていた想い。
まさかコレを見ず知らずの、ましてや志保たちを殺した相手に言うことになるとは思わなかった。
「は?志保は、大知って人と付き合っていたんでしょ?」
呆れたように彼女は言う。
確かに、今更何を言っているんだって感じだよな。
「そうだよ、俺の親友と付き合っていた。
大知が自殺したことで、志保は俺を頼るようになった。それが嬉しかったから、美佳の事件の共犯になった。
美佳でも智子でも、俺にとってはどっちでも良かったんだ。その時は、まともに考えるなんて出来なかったから」