シャッフル
 黒のワンボックスに乗り込むと、助手席に散らかした数枚のCDがあるのに気がついた。

 助手席のドアを開けた紗代里に「ちょっと待って」と言いながら急いで片付け始める。

 その時、一枚のCDを紗代里はゆっくり手にした。

「……」

 驚いた顔をしてジッとCDのジャケットを見つめている。

「紗代里……?」

 そんな紗代里に話しかける。

「どうぞ。座って」

「あ、うん!」

 慌てたように紗代里は助手席に座るとドアを閉めた。

 だが直ぐにまた手にしていたCDを見つめる。

 紗代里が手にしたCDはピアノのCDだった。

「本当にピアノ好きなんだね……」

「弾けないけど聞くぐらいなら許されるだろ?」

 少し笑っていうと車を発進させた。

「そのピアニスト、俺が一番好きなピアニストなんだ。色んなピアノを聴いて来たけど彼女のピアノには衝撃を受けたよ。感動して泣くなんて事、本当にあるんだな」

「そんなに凄いの?」

「ああ。凄いよ。さっき片付けたのも全部彼女のCD。いつも時間があれば聴いてる。因みに今流してるピアノ曲も彼女」

「凄い好きなんだね……」

 少し呆れ気味に紗代里は笑う。
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