シャッフル
 暫く居間で母と過ごすと、直ぐに実家を後にした。

 帰り際までしつこく夕飯を食べて帰れと言う母に「顔を見に来ただけだから」と、逃げる様に家を出た。

 うんざりする……。

 あの家も……弟達も……母も……爺さんも……。

 車に乗り込むと、大きな溜め息を吐きながらハンドルにもたれ掛かる。

 嫌いだ――あんな家。

 もう何度、そう思った事だろう。

 なんで俺ばっかり我慢しなければならない……。

 正直もう疲れた……。

 ゆっくりハンドルから離れ車のキーを回すと、デッキに入っていたピアノ曲が流れ出した。

 先ほどまで黒く濁った俺の心に、華やかで美しい音色が染み渡って行く――。

 そんな光の様な音色を聴きながら車を発進させた――――――――
――――
< 39 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop