シャッフル
 それぞれドリンクを注文すると、お酒を作っているマスターに気になる事を訊ねた。

「なんでお店にピアノがあるんですか?」

 そう言いながら顔を横に向け、後ろのピアノに目を向ける。

「ああ。ここジャズバーなんですよ。週末はいつもイベントしてて生演奏するんです」

「へー……」

 ピアノに目を向けたまま、そう返事をすると――。

「マスター」

 俺がピアノを見ている後ろから女性の声が聞こえた。

 近くで聞こえたので思わず声がした方へ顔を向ける。

 そこには立ったまま両手をカウンターに付け、マスターを見つめるショートボブの女性。

 同い年ぐらいだろうか……?

「あのピアノって弾いてもいいのかしら?」

 女性は俺の視線を気にすることなくマスターに話しかける。

「構わないけど……お客さん弾けるの?」

 少し疑う様にマスターが言うと、女性はニヤッと笑う。

「まーね」

 女性はそう言うと、ピアノの方へ歩いて行った。
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