シャッフル
「嘘ついてごめんなさい……。私サイテーな女でしょ?」

「……最低じゃない。紗代里が嘘をついたのは俺のせいでもある……。それに今、ちゃんと真実を話してくれてる……。紗代里は最低な女なんかじゃないよ」

 そう言うと、紗代里は瞳に涙を浮かべて小さく笑った。

 紗代里の気持ちに気付かなかった――。

 南大寺さんの話をする度に、彼女の友人である紗代里は複雑な気持ちだったんだろう。

 申し訳ない気持ちでいっぱいになる……。

 でも……知らぬ間に俺を想ってくれていた紗代里に、応える事が出来ない。

 何故だろう……。

 他の女と比べてお金も地位も関係なく接してくれる紗代里には、本当の自分を出すことが出来るのに……安心出来るのに……。

 なんで俺は紗代里を好きにならないんだろう……。

 どうして紗代里に恋愛感情が湧かないのだろう……。



 どうして――……



 どうして涙を浮かべる紗代里が目の前にいるのに……南大寺さんの顔ばかり浮かぶんだろう……―――――

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