君のためにできること
「麻生くんって変なの!かっこいいのに、それをひけらかしてないところが、またいいんだけどさ。」

「何だよ、それ。」

「ほら、ちゃんと理由まで言ったんだから、いいでしょ!試しにつきあってみて、合わなかったら別れてもいーよ。だから、ねっ!」

「・・・悪い。やっぱりつきあえない。」

「引っ掛かってるのは、“吉野志麻”?」

「何でそこに志麻の名前が出るわけ?オマエ、何か勘違いしてない?」

「勘違い・・・って何がよ?だって吉野さんって、麻生くんのスペシャルなんでしょ?」

「スペシャルって何だよ?志麻とは幼なじみなだけで、別に何もないけど。」

貴史も私と同じことを言ってる。

やっぱりお互いに、それだけの感情しかないのよね。

自分でもひやかされると、つい“家が隣なだけ”とか、“幼なじみ”という言葉が出てきてしまうけど、いざ貴史の口から、それを聞くとなると、かなり淋しい。

私は結局、貴史に会わずに、ドアのノブにシャツを引っ掛けて、屋上をあとにした。

「おい、志麻ッッ!オマエ、いつ屋上に来たんだよ?黙ってシャツだけ置いてくなよな。」

着替えを終えて教室に戻ってくると、私のもとに貴史がやってきた。
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