君のためにできること
「ああ、ごめん。それとシャツありがと。」

「ちょっと待てって!」

「何?」

「何かオマエ、怒ってねぇか?」

「別に。貴史の気のせいよ。」

そのときだった。

私がよそ見をしていたせいで、前から来た人に思いっきりぶつかってしまった。

「あ、ごめんなさい!」

その拍子にバサバサと何かが落ちた。

「・・・え・・・これって・・・。」

私は思わず目が点になった。

落ちたのは一冊のスケッチブックで、落としたせいで中にはさんであったスケッチが散らばったのだ。

「・・・何だよ、これ。これってどー見ても、志麻の絵だよな?何でオマエが志麻をスケッチしてるんだよ?!」

散らばった数十枚のスケッチには、多分私だろう人が描いてあった。

それを見て、貴史が逆ギレしたのだ。

スケッチブックの張本人は、別に顔色ひとつ変えずにこう言った。

「きれいだったから。きれいだから描きたいと思った。それだけじゃ理由になりませんか?」

そして床に落ちたスケッチを拾い始める。

「あの、ぶつかっちゃってごめんなさい。えっと、絵上手ね。」
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