君のためにできること
「わーっ、ちょっと待って待って!」

「何?」

「・・・DVD、見たい、です。」

「ふーん・・・。ならオレの部屋においで。志麻の部屋、デッキないだろ?」

「うん、行く。あ、でも着替えてからね。」

「だーめ!このままでいいから、ほら来いよ。」

そして私は貴史に言われるまま、ベランダづたいに貴史の部屋へと渡った。

「相変わらず、必要なもの以外、何も置いてないのね。」

貴史の部屋には、生活に必要な最低限のものしか置いていない。

だから来るたびに、その殺風景さに驚かされる。

貴史が毎日生活しているはずなのに、まったく温かみが感じられないのだ。

「そっかー?これでもオレには多いくらいなんだけどな。」

「なんかほら、こうもっと・・・生活観溢れるっていうか・・・。」

「いーんだよ。どーせ、寝るだけなんだから!」

そう言いながら、DVDをセットする。

「志麻。こっちおいで。もうすぐ始まるぞ。」

そして、ちょんちょんと自分の隣りを指差す。

貴史の隣り。

今はまだ、そこは私の居場所であるけど、

そのうちいつかは貴史の特別な人のものになる。
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