君のためにできること
「あ、別に吉野さんのうちを知ってたわけじゃ、ないんです・・・なんて言っても、この状況じゃ信じてもらえない、ですよね?」

と、葛城くんはひょうひょうと答える。

「え、うん・・・。ただ、びっくりしただけ、なんだけど。だって、いるなんて思ってなかったし。」

「朝から驚かせてすみません。でも、ちゃんと会って話したかったし、絵のモデルのことは、冗談半分じゃなくって、本気でそう思ってるので、真剣に考えてもらいたいなって・・・。」

私は昨日の今日で、まだ迷っていた。

それは貴史のこともあって、だったけど・・・。

あまりにも貴史が気にするので、断るつもりではいたのだ。

しかし、いざ本人が目の前に現れてしまうとなかなかどうしで言いづらい。

しかーも、朝イチで来るんだもん。

「志麻!うちの前でぐずぐず何をやってるの?遅れるわよ!」

私の声がうちの中まで聞こえたのか、母が玄関から顔を出した。

そして葛城くんに気付いた。

「あら・・・。初めて見る子ねぇ、どなたなの?」

「いいの!お母さんは!!じゃ、いってくるねっ。」

うちの母はメンクイだ。

あとできっと、葛城くんのことを聞いてくるに違いない。
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