君のためにできること
放課後になると、葛城くんが教室まで迎えに来てくれた。

「ねぇ、いつもは車なんでしょ?」

帰りも電車で帰ると言うので、気になって聞いてみた。

「あれ?誰に聞きました?よく知ってますねぇ。ほら、せっかく吉野さんと帰れるんだから、ちょっと電車で遠回りしちゃおうかなって。」

そう言うことをさらっと言いのける葛城くんなので、

聞いたこっちが思わず赤面してしまう。

「葛城くんって、お坊ちゃんだったんだね・・・。しかも、結構有名人。なーんにも知らなかったよー。」

「そうでしょうね。吉野さん、麻生さんしか見えてないですもんね。」

そう言って、葛城くんは私のことをじっと見つめた。

でも、ふいっと視線をそらすと、

「オレ、ずっと吉野さんのことを見てたから、わかるんですよね。何となくっていうか、気づきたくもないんですけれどね・・・。」

と、寂しそうに言葉を吐き出した。

「あ、はっ。なんだ、気づかれてたのかぁ・・・。やだなぁ、私ってば、そんなにわかりやすいのかな・・・。」

「麻生さんだって、気づいてますよ。それでいて、気づかないフリしてるだけ・・・。」

「そんなことないでしょ。そんなこと・・・ないよ。」
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