君のためにできること
それは自分でもそう思っていただけに、かなり心の奥深くにまでずしんと響いた。

いつもそれとなく、貴史には伝わればいいなと接してきたつもりだ。

ただ、やっぱり拒否られるのが怖くて、今一歩近づけなかったのも事実だ。

このままじゃいけないんだろうなぁとは、ずっと思ってた。

片方に恋心がある限り、

ただの幼なじみじゃいられない。

「・・・吉野さん?」

「あ・・・。ごめん、ちょっと、ボーっとしてたね。ははっ、やだなぁ、私ってば。」

「麻生さんのこと、気になりますか?彼、吉野さんがオレのモデルになるの、かなり嫌がってましたもんねぇ・・・。・・・ってまだ、モデルになるなんて、決まってないですけどね(笑)。」

「あぁ、貴史のことなら平気よ!そんなの貴史の意見じゃなく、私が決めることだし。それにうちら、付き合ってるわけでもないからさぁ。そんなモデルやるの、やらないので怒られちゃたまんないもん。」

「そっか。よかった!あ、うちもうすぐです。」

駅からしばらく歩くと、閑静な住宅街に出た。

しかも、高級住宅ばかりが並んでいる・・・。

「葛城くんてば、いいとこ住んでるんだね・・・。」

「親が会社経営してるだけで、直接オレには関係ないですから。でも、絵の道具とか揃えてもらったことには、感謝しなくちゃですけどね。」

そして、にっと笑う。

なんかこの笑顔に弱いなぁ。
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