つぼみ、ほころぶ
それは――


「当然だろ。血縁こそないが、おいそれとは扱えない距離があって……これはアニキもそうだろうが、チイは要だったんだ」


「カナメ?」


「ああ。――母親と親父が再婚して、そこそこ早く母親が亡くなって。短い時間の中で、確かに親父とは家族になれたけど、どっかに不安も感じてた」


「っ、そんなことっ!」


「仕方ないだろ。アニキは思春期。オレだって、笑うことしか知らない歳でもなかったんだ」


当時、笑ってたのは、多分あたしだけだった。


「でもな、赤ん坊のパワーはとてつもなかった。チイのこと言ってんだからな。――チイがいてくれたから、あの家に溶け込めたことなんてたくさんある。チイがいてくれたから帰れた日だって、わりとあったんだ」


――それは、何処かで耳にしたものや、愛読してきた小説のそれなんかより、遥かに尊くて。


最大級の愛の告白みたいだった。

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