つぼみ、ほころぶ
遠くに見える角を曲がったら、もうすぐあたしたちの家だ。


そして、そこからもう少し行くと、カズくんユウちゃんの家。


もう到着なのに窓を半分開けると、この季節特有の生暖かい空気が車内に流れ込んでくる。


「千歳、お母さんくしゃみ出ちゃうわ」


「っ、ああ、ごめんなさいっ」


酷い花粉症の母が手で顔を覆う。母以外がなんともないと、ついつい忘れてしまう。慌てて窓を閉めた。


手持ち無沙汰になってしまった時間を消化するように、胸下まであるストレートの髪を弄びながら、ついさっき感じてしまった不安を心配ないと自分に言い聞かせた。




「そうだっ!」


突然、ユウちゃんが指を鳴らした。それはまる で、事件解決の糸口を見出した何処ぞの探偵みたいに。口元は何やら小さく動いてて独りごちてる。


「――チイ、明日は暇か?」
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