つぼみ、ほころぶ
教えてはもらえなかったけど、その言葉で、昨日のカズくんとの会話の内容を想像出来てしまった。
代理の折り返しをしようと思ってた電話は一旦控えて、心苦しい言い訳の脳内シュミレーションを重ねることにした。
「カズくんに、連れてっては冗談なの? あたし、あの旅館また行きたいな。――はい、ケータイ」
赤信号で停車したすきにケータイを返す。
「うん? ああ。……連れてかれんのは、ちょっとばかし嫌な気分だな」
その時、ユウちゃんとあたしの手が少しだけ触れた。
「っ!!」
「……」
その手の熱さに、その嫉妬めいた言葉に、お互いの動きが一瞬止まった。
「……考えといてあげる」
「それはそれは――どうもありがとう」
心臓が跳ねたあたしは、内緒にすることにした。