つぼみ、ほころぶ
家に入り、リビングへ行くと父がいた。
「ただいま」
「おかえり」
突然の残業は順調に終わったらしい。テーブルの上には、自炊した具無し焼きそばの痕跡があった。
「はい。遅いかもだけど、カズくんたちからお父さんにお土産」
早いほうが美味しいなんて珍しいことを言う父 が、お土産の飲茶セットを広げ、あたしと母も席に着いてひとつずつつまんだ。
「美味しいな。一馬と優二にお礼はちゃんと言ったか? 千歳」
これまた珍しく味の感想を述べた父が、いつも通りうるさく礼儀はちゃんと通してきたのかを訊ねてきた。
「言ったよ。しっかりと。お礼にね、明日ユウ ちゃんの暇つぶしに付き合ってあげるの」
「そうか」