つぼみ、ほころぶ
カズくんが働くお店は適度に広くて、あたしは少し落ち着かない気分になってしまった。


「いらっしゃいませ、チイちゃん」


「うっ……カズくん。急にごめんね。そして、あたしは何を予約されたの? ユウちゃんに」


あたしの質問に、カズくんは申し訳なさそうに眉を下げる。そして、ユウちゃんを振り返り。


「ユウ~……」


「チイが寝坊したからだ。――チイ。アニキに可愛らしくしてもらっとけ。オレはちょっと外出」


「ええ~っ! 置いてけぼりしないでよっ」


「アニキいるし、個室予約しといてやったからいいだろ。すぐ戻る」


ほんとに、ユウちゃんは車で何処かへ走り去っていってしまった。
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