つぼみ、ほころぶ
地に足がつかないみたいな感覚。オマエにはまだ早いと、磁石で反発されてるみたいな。


キラキラしてて洗練された店内に、興味こそあれど、あたしはとんでもなく場違いな気持ちを味わってしまった。


頼るべきカズくんは、当然だけどしっかりお店の人で、後輩さんであろうお姉さんたちにあれこれ指示を出してて――初めて見るその姿は、とてもカッコよかった。


これは、あたしの身内贔屓だけじゃないと思ってるんだけど、カズくんはけっこういい男だと思う。第一印象でマイナスなとこなんかないと思う。清潔感があって、笑うと覗く八重歯がちょっと幼いギャプで可愛くなる。


中身だっていいと思う。甘やかすだけに特化せ ず、ちゃんと正される。家事も出来るし気も利 く。カサカサした手だって、努力の勲章だから誇らしい。


「チイちゃん」


「っ、はーい」


ようやくあたしに構える態勢になったカズくんに呼ばれる。


もうひとりの、言ってはあげないけど少しはカッコいい愚弟のほうの愚痴をお腹の中で呟きながら、あたしはお店の奥に入っていった。
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