つぼみ、ほころぶ
カズくんの指先はカサカサしてて、シャンプーやパーマ液の混ざった匂いが鼻をツンと刺した。カズくんは美容師さんだ。
「ごめんなさいでした」
「うん。よろしい」
信号が青に変わった。解放された鼻先には残り香がまだあって、それがやんわりとあたしを責め続ける。
「今度、おじさんとふたりでデートしてきなよ」
「ふたりっきりで? お祝いに何か買ってくれるかな?」
「――チイちゃん」
「っ、無理強いはしないよおっ」
べつに、カズくんは本気で怒ってるわけじゃな かったけど、自分でも少し発言に申し訳なさを感じたものだから、座りなおした身体をもう一度前に倒して弁解した。
「ごめんなさいでした」
「うん。よろしい」
信号が青に変わった。解放された鼻先には残り香がまだあって、それがやんわりとあたしを責め続ける。
「今度、おじさんとふたりでデートしてきなよ」
「ふたりっきりで? お祝いに何か買ってくれるかな?」
「――チイちゃん」
「っ、無理強いはしないよおっ」
べつに、カズくんは本気で怒ってるわけじゃな かったけど、自分でも少し発言に申し訳なさを感じたものだから、座りなおした身体をもう一度前に倒して弁解した。