つぼみ、ほころぶ
暴君な時もあるけど、基本優しいユウちゃん。今は彼女がいないみたいだけど、それもきっと僅かな時間のことなんだろう。


席に案内されて、あたしは彼女らしく、ユウちゃんと一緒にケーキを選びに行く。ユウちゃんは主に軽食、あたしはケーキをとりあえず端から順にお皿へ。


「おい、チイ。オレの皿にまでケーキ乗せんな」


「ユウちゃんケーキ少なすぎ。甘味好きなんだからもっと、ね? そのほうが楽しいでしょ?」


「好き嫌いがないだけだ。オレは」


「恥ずかしいの? 外でそういうこと言われるの」


「そのふたつには大きな違いがあるからですよ、チイ様」


ヒートアップしそうだったあたしたちの会話は、どちらともなく思い出した彼氏彼女を演じる約束によって、仲が良さそうに微笑むだけとなった。


いや。決して、仲が悪いだけじゃないんだけどね。
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