つぼみ、ほころぶ
「……おいっ。チイがうるさいから寝られんだろうが」


なのに、反省の行為は途中で遮られる。


後方から耳を引っ張られ、あたしは背中から後部座席へ倒れこんだ。


「った~いっ!! 何すんのよっ、ユウちゃん」


「騒がしくするから目が覚めた」


「あら。優二君、おはよう。お疲れなのに、今日は千歳のお祝いありがとう」


「気にしないでよ、おばさん。いつもはオレらが世話になってるんだし、他ならぬチイ様の為だし――なあ? チイ」


「あら。兄弟で同じことを言うのね」


「ゲッ……アニキとかよ。最悪」


言葉でだけは敬われながら、あたしはまだ耳を 引っ張られたままだ。


ユウちゃんの指は、カズくんとは対照的でサラサラとした感じ。服飾関係の会社で、今は営業職だから、身だしなみには気を使ってるんだと聞かされたことがある。
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