つぼみ、ほころぶ
名前を何度か教えられたけど、結局覚えてないユウちゃんの鮮やかな青い愛車。今日はあたしの為にとガソリンも満タンにしてきたのだと誇られた。


そんなこと言われても急には決められない。あたしは『その日』に合わせて熟考するタイプなんだ。


――それに、いつもと違う印象の自分の姿に合う場所なんて、もっと想像がつかない。


「ま、車出して適当に走っとくぞ。思いついたら言えよ」


あれよあれよと、ユウちゃんは車を発進させてしまった。


地下から地上に這い出した青い車は、眩しすぎるくらい陽光に反射する。


それは、洗車したばかりの輝きだった。
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