つぼみ、ほころぶ
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トイレ休憩に一度、ユウちゃんが電話するのに一度、必要最低限車を停めただけで、渋滞に巻き込まれることもなく、急遽目的地となった箱根へ到着。


それでも、場所が場所だっただけに結構な時間は要したけど。


お正月にテレビで観るマラソン中継の山道を走る頃には、空はもう茜色だった。


「しかし残念だったなあ。チイがテレビで観て行きたがってた老舗甘味処は定休日だと」


「……ていうか、営業しててもさすがにお腹に余裕はなかったけどね」


道中、車内で繰り広げられたカラオケだけではバイキングのケーキたちは消化されなかった。


「――まあ、甘味は無理だったが、老舗っていうのはどんなもんか、今からじっくり味わわせてやるとしよう」


「ん? 老舗?」


ユウちゃんはハンドルを握り締めながら、いたずらっ子さながらの表情を浮かべる。


それ以上を教えてくれることもなく、その目的の地へは到着した。
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