つぼみ、ほころぶ
「……そんな密な時間を過ごせば、女将さんもユウちゃんを覚えてるか」


「――で、こんな豪華なとこで結局はくつろげなかったなって、帰る時漏らしたら、女将さんが気を使ってくれて、会員制だけど、オレは特別にいつか泊まらせてくれるって」


「やっぱり、ここはそんなとこか」


「半年前に意気込んで予約したさ」


「……。――まさか、そこであたしの卒業祝いに、とか嘘つかないよね?」


わがままを言い出さなきゃ、あたしは今日ここに来ることなんてなかったんだから。


「あー……」


視線を逸らし、情けなく語られたそれは、確かに……さっきよりはもう少し、慰めてあげてもいいくらいの。


「……オレも、予約したすぐあとに振られたんだよな」
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