つぼみ、ほころぶ

「チイならそう言うと思った」


「……言ってくれる、の間違いじゃなくて?」


「ならそうしておいてやる。――メシまでまだ時間あるし、念願の温泉でも行ってくれば?」


確かに、それはとても惹かれる提案だけど。


「うん。じゃあそうする」


「ああ。――てか待てチイ。ひとつ忘れてた」


あたしを引き止めると、ユウちゃんはケータイを取り出して何処かへ電話をかけ始めた。


ほどなくして繋がった電話の相手に、ユウちゃんは親しげに話し始める。


「――あっ、おばさん?」


「っ!!」


指を立て口元にかざし、ユウちゃんがあたしを制する。


「うんそう。遊んでるよ。――でさ、チイがさあ、朝までカラオケをしたいって言ってんだけど――いい?」


ユウちゃんが、なんでそんな嘘をつくのか分からなかった。
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