つぼみ、ほころぶ

脱衣所の扉を閉めてひとりきりになると、途端に足の震えが襲ってきた。


……あたしだけが、心苦しくなってる。


「あたしって、こんなに……」


さっきから、そうほんとにさっきから、あたしは変だ。


上手く隠しきれてた?


さっき、身振り手振り付きの小説の音読によって、あたしの手にユウちゃんがキスをしてきた時から……。


キスの経験がないわけじゃない。ユウちゃんとなんて、今までだって散々じゃれ合ってきた。


なのに……


「……いやらしい」


あたしはそんな人間だったんだろうか。


あんな、キスとも呼べないもので、ユウちゃんでこんなに簡単に……。
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