つぼみ、ほころぶ
――


そうなんだ。


恋愛経験はあるにしても、それよりは確実にこなしてきただろうユウちゃんが、普段とは違う顔で、あたしの大好きな小説を体現なんてしたものだから。


だから、あたしの中の乙女回路が焼き切れただけのことだった。


幾つもある豪華で洗練された部屋を散策するうちに、それは充分に修復されていった。


ユウちゃんのお風呂あがり、丁度いいタイミングで運ばれてきた美味しい夕食を食べる頃には、あたしはもう何もおかしいところはなくなっていた。


ユウちゃんも同じ。


……いや、ユウちゃんはずっと同じ。あたしをからかった時だけ暴君レベルが下がったくらいで、あとはずっと。だったんだけど。
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