つぼみ、ほころぶ

それからしばらくは、とくにすることもなく、ただただテレビを観賞した。だって凄かったんだ。会員制旅館の備え付けテレビは、あたしやユウちゃんの家のそれよりかなり特大だった。


大きな大きなテレビでは、その迫力がより伝わるようなアクション映画が放送されてた。


「あーあ。気づくの遅かった。もうクライマックスだったなんて」


「オレはちょうどいい。実はもう観賞済みで、おさらい程度のもんだったからな」


「嘘っぽーい。それにしては額に汗かき一生懸命見入ってた。もっかい露天風呂行ってくれば?」


「チイの方が顔テカッて仕方ないぞ」


「うそっ?」


「ほんとだ。どんだけ熱心に観てんだよ」


「何にでも全力投球と言って」
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