つぼみ、ほころぶ
「そりゃ、賢明なご判断で」


「色んな知識を蓄積していくのも、無駄なこと じゃないんだけどね。チイちゃんの状況はそれも可能だったのに。――おばさんは意見しなかったの?」


説明するまでもなく、優しい言葉はカズくんからのもの。


「したけれど、最後は千歳が決めることだもの ね。一馬君が言ってくれたことと同じことを思っていたけれど。――私も、大学は行っていないから」


そうかもしれないけど、あたしには、何も見つけられないって、思っちゃったんだ。


「いいのっ。希望の事務職ゲット出来たんだし、残業は少なそうだから、スキルアップを計りながら本を読む時間も作れそうだし」


選んだからといって、職にだけ邁進する覚悟はないけど、ゆっくりと、ちゃんと進んでいけたらいいんじゃないかと着地点は見つけた。
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