つぼみ、ほころぶ
「――キャンセル料だけ。……あとは、悲しいだけ。最後に言われたことが」


「そうか」


それは、薄暗い部屋の中での錯覚かもしれないけど――怒った顔が、薄れていったみたいに感じた。


じゃあ、あたしはいったい何がそんなに悲しいのか。ユウちゃんをこんなに困らせたりしてまで。


……普通の、ごく一般的な高校生同士のお付き合いだったと思う。


それは今でもそう思う。


向こうから告白されて付き合って、あたしは最初そんなでもなかったけど、一緒にいる時間で愛しさは増していった。


放課後や休みの日にデートをしたり、お互いのバイト先へ冷やかしに行ったり、ちゃんとテスト勉強だってしたり。


恥ずかしがり合ったり、笑い合ったり、ケンカもした。


キスも、した。
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