つぼみ、ほころぶ
「結論はそうだが、対する人と自分と心とか、そういうもんがあるから、ひとりを大切に出来るんだろ。そこに愛情があるから、気持ちいいだけの行為じゃなくて、心も満たされるんじゃないのか?」


――うん。そうだったら嬉しい。


世界は幸せなこともあるんだと思える。


「チイの、最低な殴ってやりたい元彼……最後の最低な台詞は、強がり大半と、男子高校生の抑えきれない性への欲求だ」


「……最低」


「わけも分からず覚えちまった快楽の前に、自分を保たせられる若人なんてななかなかいないんだよ」


「覚えとく。――そんなことが言えるユウちゃんは、もう乗り越えた大人なんだね」


「おうよ」


自信に満ちたその声と態度は、さっき白状した『たとえばの経験』以外にも乗り越えた様子を表していた。


湯船で溺れた気持ち悪さも、その他も、もう一口とせがんだスポーツドリンクできれいさっぱり流れてくれた。


「――うん。だったらいいや」


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