ため息をついた日
「ため息ばっかりついてると、幸せ逃げちゃうゾ♪」
思わず諒哉をキッと睨む。また、すいません、と呟くように言うとしゅんと下を向く。
それを見て、またため息をつきそうになったが、慌てて飲み込んだ。優愛だって、ため息をつかずに過ごせるならその方が良い。

「正社員として採用になったのよね。」
もう一度念押しで聞く。良いことなのだが、優愛は心配だった。また同じように、体調が悪くなるのではないかと。

「もしかして心配してる?」
余程顔に出たのだろうか。今まで不安や不満などは気付かれたことがないのに。
「大丈夫だよ。確かに大手ホテルだけど、T町の方は客室数がかなり少ないから、シフトもゆったりなんだ。」

少しホッとしたのもつかの間で、だけどね、と話が続きまた顔が強ばるのが自分でも分かった。
「だけどね、今度の所は量より質だから。もしかしたらかえって大変かも。」
以前勤めていたホテルは大きな駅の駅前にあるビジネスホテルで、ライバルも多かった。バイトをしていたというホテルもかなり大規模だから、勝手は違うだろう。
「でも、人がどうしたいとか、どうして欲しいとか考えて動くのは昔から得意分野でしょ?」
優愛の一言で、諒哉の表情が変わる。
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